『諸君!』平成11年12月号が「三島事件」を特集した。
今から11年も前のことだ。
今年がちょうど事件から40年だから、事件以来29年という妙な年に、大掛かりな特集を組んだことになる。
そこで当時、編集長に「特集を切りのいい来年に回さなかったのは何故か」と尋ねた。
すると編集長氏曰く、「来年だと私は別の部署に移動していそうだったから」と。
この人自身もかなり思い入れがあったのだ。
その特集の柱の一つが「著名人100人アンケート」。
これは今、読んでも興味深い。
冒頭が作家の阿川弘之氏、次が事件当時の防衛庁長官で元首相の中曽根康弘氏、それから初代内閣安全保障室長の佐佐淳行氏と続いて、最後はピアニストの中村紘子氏だった。
実に多彩な顔触れだ。
どうした訳か、私も隅っこに加えて頂いている。
私の前には漫画家の加藤芳郎氏、後には評論家の宮崎哲弥氏が筆を執っておられた。
拙文は別に紹介するとして、何人かの文章を、断片的で失礼乍ら、お目にかけよう。
女優の村松英子氏
「先生がいとおしみ、落胆し、警告した『日本』は、ますます警告通り滅びへ向かってきた、と感慨無量です」
東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏
「三島氏のあの行動の精神的影響力の深さと持続とには正直に感嘆します。
但し行動自体に対する私自身の評価は変わりません。一片の愚行であつたと思っています」
埼玉大学教授の長谷川三千子氏
「自分自身の生き方を考えようとするときに、いつも知らず知らずの内に、三島さんのあの『行動』を基準点として、そこからの距離をはかりながら考えるのが習い性となっています」
文芸評論家の入江隆則氏
「三島由紀夫は共同体の魂を呼び戻し、あるべき姿の天皇を召喚するために、彼の『私的な死を『使った』」
作詞家・作家のなかにし礼氏
「現代の日本人のありようを予見した天才だった」
作家の清水良典氏
「保守陣営が台頭しているのに三島が正面から扱われないのは、三島の中に〈保守〉を突き抜けた危険な思想を察知しているからだろう」
評論家の西尾幹二氏
「三島事件は日本史の分水嶺をなす象徴的事件である。
事件の前と後とで、くっきりと時代が二つに分かれる」
作家の井沢元彦氏
「伝統的な右翼ということではありません。…いわば日本思想の『聖者』だ」…まだまだ紹介したいが、キリがないので打ち切ろう。
なお来る11月21日、三島事件40年にちなみ岡山県護国神社境内の「いさお会館」にて講演を予定している。
午後1時半から2時間。演題は「よみがえる三島由紀夫」。
同じ会場で午前11時から祭典も執り行われる。